【広報コラム】「玉手橋に新事実!?」(2019・9)

2024年9月12日

 「柏原市内の橋」と聞いてまず思い浮かぶものは、石川に架かる赤い吊橋「玉手橋」ではないでしょうか。全長は151.3m。ケーブルでつながれた柱間が5つある「5径間(けいかん)」は日本全国でもこれだけです。
 さてこの玉手橋は近鉄の前身会社の一つである「大阪鉄道株式会社」が建設したものです。昭和27 年に刊行された大阪鉄道の歴史を振り返る『大鐵全史』にはその完成が「昭和三年三月一七日」と記されています。橋梁の研究者はそれをもとに玉手橋の歴史について考えてきました。
 昨年の春、とある見学会で道明寺天満宮をお伺いした際、宮司の南坊城光興氏から「渡初(わたりぞめ)式の祝詞(のりと)が見つかった」とご披露がありました。祝詞は神事において神に対して唱える言葉で、感謝と安全の願いが込められています。その表書きに「昭和四年三月十七日」と日付が記されているというのです。また「昭和三年八月」に起工式を行ったことも記されています。
 祝詞は式典前に準備されるもので、日付を間違うことは考えられません。対して『大鐵全史』は、橋の完成から20年以上も経ってから刊行されており、筆者の記憶違いがあったのかも知れません。
 橋の完成から90年経っての新事実。これまで考えられていた完成年が丸1年違うことが明らかとなりました。しかし斬新で可愛らしいその姿は橋を使う人たちに強い印象を残し続けていくことに変わりはないでしょう。

玉手橋

▲玉手橋

(2019年9月号掲載) 

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