【広報コラム】「もうすぐ春ですね」(2021・3)

2024年9月5日

 河内地域には「春事(はるごと)」と呼ばれる行事がありました。
 『柏原市史』第3巻(昭和47年)「柏原の民俗 一 年中行事」には「三月二十五日 この日は春の休日であり、人々は仕事を休んで遊びに行く。行く先は松隣山・大日山などの山、大和川の河辺、道明寺の天神様、その他氏神の社などである。弁当には寿司が作られるが、その他に蓬艾(よもぎ)団子やナタネゴクウ(菜種の形・色を真似て作った小麦団子)が作られる。この日をハルゴト(春ごと)と一般にいわれている」と記されています。
 巻き寿司、よもぎ餅などを用意して野山や川のほとりに出かけたり、寺社参詣などで1日を遊ぶ。この日はこれから忙しくなる農作業前のくつろぎの日としてみんなが楽しみにしていました。
 3月25日は菅原道真公の命日(旧暦では2月25日)にあたります。道明寺天満宮では菜種御供大祭(なたねのごくうたいさい)が行われ、かつては新年の初詣よりも人出が多かったと言われています。柏原にお住まいの方は、特に春事には道明寺天満宮に参詣することが定番となっていたようで、そのにぎわいを思い出深くお聞かせくださる方もおいでです。ちなみに近鉄道明寺線(当時は河陽鉄道)が開業したのは明治31(1898)年3月24日のこと。菜種御供大祭の前日です。多くの参拝客輸送を当て込んで開業日を選んだのでしょう。
 冬を越え、待ちわびていた春が来ることを喜び、1年の豊作を願う気持ちがこの春事に込められていました。供される菜の花のような黄色の団子「菜種御供」には病気平癒の効が有ると言われています。柏原にそして皆さまに、希望に満ちた春がやって来ますように。

春

(2021年3月号掲載) 

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