【広報コラム】「物流基地・柏原」(2021・8)

2024年9月5日

 幕府の「代官」とは、全国に存在する江戸幕府の直轄領である天領において、その行政を担当する役人のことを言います。「お代官様」などと言うと、時代劇の影響で、悪者のイメージが強いかも知れません。一方、善政を敷き、神様としていまも尊敬を集めている「お代官様」もいます。
 実は、江戸時代の柏原村も天領でした。江戸時代初期、当地周辺の代官職を世襲していたのが、末吉(すえよし)家の人びとです。末吉家は、日本が鎖国する以前、秀吉から家康の時代に、東南アジアの諸国と朱印船貿易を行い、巨万の富を築いた平野(現大阪市平野区)の豪商で、一方、幕府代官という顔も持ち合わせていました。経営手腕に長け、また、地域に顔の利く彼らには幕府から派遣された役人も頭の上がらないところがありました。そうした人物が代官であったことが、柏原村の運命を変えます。
 トラックのない時代、荷物は船で運ぶのがベストです。平野川とそれにつながる農業用水路を整備し、大坂‐平野‐柏原間を舟で往来させれば、柏原の地は、南河内・大和国(現奈良県)行き荷物の一大物流拠点として開発できるのではないか。こう考えた末吉孫左衛門(まござえもん)は、洪水被害に悩まされていた柏原の復興を旗印に、いろいろな働きかけを行ない、「柏原船」の運航にこぎ着けるのです。期待通り、「柏原船」興行はたいそう繁盛しました。

平野川
▲かつて「柏原船」が行き交った平野川

(2021年8月号掲載) 

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