【広報コラム】「亀の瀬で紅葉狩り」(2021・11)
2024年9月5日
治安3(1023)年、時の権力者、藤原道長(ふじわらのみちなが)は、京の都から高野山への参詣旅行に出かけ、帰路、法隆寺を経て、大阪湾でのクルージングを楽しむため、「龍田古道」を通りました。旧暦10月27日、折りしも、紅葉真っ盛りのシーズンで、道長一行は、紅葉の名所として名高い龍田・亀の瀬で、酒宴を開催します。
亀瀬山の嵐、紅葉影脆(もろ)く、龍田川の浪、白花声寒し。爰ここに山中に於おいて仮に草座を鋪しき、聊(いささ)か菓子を供す。紅葉を焼き、佳酒(かしゅ)を煖(あたた)む。蓋(けだ)し、寒風を避(さ) くるなり。―『扶桑略記(ふそうりゃっき)』という古代の史料には、宴の様子について、このような記録が載せられています。
この文章は、中国の文章を定型文的に引用していることが研究者によって指摘されていますが、道長らが、亀の瀬の絶景を前にして焚(た)き火に暖まり、熱燗と菓子を片手に紅葉狩りを楽しんだことは、ひとまず事実とみて良いでしょう。今から千年ほど前のことです。
道長たちは、この日、道明寺に宿泊し、翌日、智識寺(ちしきじ)、四天王寺にお参りするなどして、難波(なにわ)の宿まで到着したようです。
気のおけない友だちと紅葉を楽しむ、そのような日常が早く戻ってくることを願ってやみません。
▲紅葉の峠八幡神社(澤戢三氏撮影)
(2021年11月号掲載)
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