【広報コラム】「生活再現展示」(2023・1)
2024年8月29日
歴史資料館には、企画展示室の片隅に「ちょっとむかしのお家のなか」を再現したコーナーがあります。今年度の冬季企画展「柏原の明治時代」の開催中は、明治時代の「冬の夜」をモチーフにした展示を行います。
この時代、電気はいまだ一般家庭には無縁の存在で、主にアメリカから輸入した灯油を用いた、「洋灯」と呼ばれる石油ランプが、家の中を照らしていました。江戸時代の明かりに比べるとかなり照度があり、秋・冬の長い夜にも、いろいろな作業ができるようになりました。展示では、夕飯の後、火鉢で暖を取りながら、秋に刈り取った稲穂を用いて、家族総出で縄をなっている様子をイメージしています。
こうした作業がひとところで行われたのが、この時代の特徴でした。多くの家庭で、石油ランプは、一家に一つ買うのがやっとだったからです。そのため、バラバラの作業をしている時間も、皆が「茶の間」に集うようになりました。これは、江戸時代には見られなかった光景です。明治時代の「冬の夜」、家族がひとつの空間に全員集合することで、近代的な「家族団らん」が成立したのでした。
その後、電気照明が普及しても、ラジオ、次いでテレビが、家族を夜の「茶の間」に引き付ける役割を果してきました。近年は、スマートフォンの普及などによって、状況が少し変化を見せているかもしれません。
(2023年1月号掲載)
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