【コラム】高井田山古墳ってどんな古墳? (9)石室内出土の武具
甲冑は一式がそろっています。玄室の奥壁に沿って、東から冑、肩甲、頸甲、少し西に離れて短甲、その周辺から草摺の小札が出土しています。横矧板鋲留式の衝角付冑と短甲は5世紀後半頃に普及したもので、高井田山古墳の年代に一致します。
横矧板鋲留衝角付冑(よこはぎいたびょうどめしきしょうかくつきかぶと)
冑は4枚の帯のような鉄板を重ね、頭頂部を大きめの鉄板で覆っています。一番下の鉄板には綴(しころ)が取り付きます。綴とは側頭部から後頭部を保護するためのもので、鉄板3枚を革紐で綴じつけていたようです。冑は衝角部を奥壁側に向け、右側面を下にして横倒しの状態で出土しており、肩甲や頸甲の上に置かれていたと考えられます。
頸甲(あかべよろい)
頸甲は、首から胸にかけてを覆う甲です。冑のすぐ西から、正面を西南西に向けて出土しています。左右の肩部と胸側・背側を中央で合せるための4枚の鉄板で構成され、正面の形状は逆台形となります。それぞれの鉄板は革紐で綴じ合わせる型式の頸甲です。
肩甲
肩甲は頸甲の両側から出土しており、玄室奥側が右肩甲、その南側が左肩甲になります。細長い帯状の鉄板を11枚綴じ合わせていて、肩の上部から肘にかけて保護することができるものです。
横矧板鋲留短甲
短甲は玄室北西隅近くから出土しています。前胴を下、後胴を上に向けて倒れた状態で出土していますが、もともと西棺の上に置かれたいたものが、木棺の腐朽によって奥壁側に倒れこんだと考えられます。冑と同じ横矧板鋲留式で、横長の帯状の鉄板を重ねて鋲で留めたもので、右前胴部分で開閉することができるようになっています。
草摺小札(くさずりこざね)
小さく薄い鉄板を小札といいます。長さ8~9cm、幅2.8cm、厚さ0.1cm前後で、大腿部を保護するための草摺と考えられます。孔に通された革紐の痕跡を残しているものもみられ、上下の小札を革紐でつなぎ、隣の小札とは革紐で綴じ合わせることによって草摺を構成していることがわかります。小札は短甲とともに西棺上に置かれていたと考えられ、ます。5段、総数250枚前後の小札が綴じ合わされていたと復元できます。
(安村)
横矧板鋲留衝角付冑