【コラム】高井田山古墳ってどんな古墳? (10)そのほかの出土品

2023年4月14日

 石室内のそのほかの副葬品

 これまで紹介した副葬品以外に、石室内からは馬具、農工具などが出土しています。
 馬具は木心鉄板張輪鐙の破片、革帯をつなぐ鉸具などが出土しています。玄室南西部から多く出土していますが、盗掘坑からも鐙片が出土しているので、盗掘によってかなりの馬具が持ち出されていると考えられます。農工具は、鎌、ヤリガンナ、刀子などが出土しています。ほかに不明金属製品、布巻製品や布、漆膜などが出土しています。

 玄室の南東部からは、須恵器が多数出土しています。もとの位置を復元すると、小形の無蓋高坏2点とはそう1点を接するように並べ、その周囲に8点の有蓋高坏、その北東部に大形の無蓋高坏を1点置いていたことがわかります。これらの須恵器は、陶邑窯跡群のTK23型式に相当し、その年代は5世紀後葉から末葉にかけてと考えられます。玄室南西部からは土師器の長頸壷が出土しています。また、製塩土器の底部小片が須恵器群の下から出土しています。

 墳丘上と推定される出土品

 玄室南寄り上層から須恵器の壷、脚付壷、器台が出土しています。墳丘上おそらく墳頂部に置かれていた須恵器が石室の崩落とともに落ち込んだものと考えられます。玄室中央上層からは土師器壷の破片が出土しています。これも墳丘に置かれていたものでしょう。

 墳丘北東部の調査区および石室内上層から埴輪片が十数点出土しています。出土状況から、墳丘頂部に須恵器器台などとともに十本前後の埴輪が樹立されていたと考えられます。円筒埴輪6本以上、朝顔形埴輪2本以上、蓋形埴輪が立てられていたようです。円筒埴輪の外面には静止痕が右に傾いた継続するヨコハケ(Bd種ヨコハケ)がみられます。5世紀後半頃の年代と考えられ、須恵器の年代観に一致します。横穴式石室という新しい埋葬形態が採用される一方で、埴輪の樹立や墳頂部での須恵器器台の供献など伝統的な要素も認めることができます。 

 なお2023年3月に、墳丘の南西下方の崩落した土砂の中から、須恵器蓋坏と埴輪片を採集しました。蓋坏は石室内出土須恵器と同じTK23型式で、高井田山古墳に伴う須恵器と考えられます。石室内からは出土していない蓋坏なので、どのように使用されたのか興味深いところです。

(安村)

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出土土器

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