【コラム】高井田山古墳ってどんな古墳? (5)二つの木棺・東棺

2023年3月24日

 東棺は盗掘を受けていませんでした。やはり北頭位に葬られ、頭部のすぐ北にひのしと画像鏡が置かれ、ひのしの柄部分に首飾りと推定されるガラス玉がまとめて置かれていました。両耳の位置からは、純金製の耳環が1点ずつ出土しています。両手首、両足首の位置からもガラス玉がまとまって出土していて、それぞれ手首、足首を飾る玉と考えられます。耳環と手玉・足玉は、身に付けたままで埋葬されたと考えられます。それらの出土位置から、被葬者の身長は150cm前後のようです。また身体の右側に沿うように、刃先を足元に向けて鉄刀が1本置かれていました。足元には銀製装具を伴う刀子と推定される鉄製品が2点置かれていたようです。
 東棺に使用された鉄釘は、ほぼ元の位置を留めています。鉄釘は36点出土しており、釘の頭部を残すものから18本の釘が使用されていたと復元されます。長さは15~20cm、断面は一辺7mm前後の方形と考えられます。頭部は四方に広がるものが多く、一方に折れ曲がるもの、次第に広がるものもあります。
鉄釘には木目が顕著に残っており、上半に横方向、下半に縦方向の木目が残るものをA類、全体に横方向の木目が残り、上半と下半でその向きが直交するものをB類、全体に横方向の木目が残り、上半と下半でその向きが一致するものをC類とします。
 A類は長側板から長側板に挟まれた小口板に打たれたものと考えられます。木棺の推定四隅から1本ずつ出土しており、これによって木棺の大きさがほぼ復元できます。B類は底板もしくは蓋板から小口板に打たれたものと考えられます。C類は長側板に沿って出土しており、底板の上に長側板がのる構造とすると、底板もしくは蓋板から長側板に打たれたものと考えられます。C類の鉄釘は、東西各3箇所、計6箇所に2本ずつセットで出土しています。おそらく底板から打たれたものと、蓋板から打たれたものがセットになっていると考えられます。東側板のC類鉄釘が、すべて先端を東に向けて出土していることから、木棺の腐朽に伴って、東側板が東に倒れたことがわかります。これら鉄釘の出土位置と残っている木目から推定される板の厚さなどから東棺の大きさを復元すると、長さ228cm、幅74cm、内法は長さ216cm、幅56cmとなります。板材の厚さは、底板が7cm前後、側板が9cm弱、小口板が6cmと復元できます。

(安村)

コラム5

鉄釘の分類

コラムB東棺推定復元図

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