2022年のスポット展示
2022年(令和4年)
1~2月のテーマ『こんなモノをいただきました‐火縄銃・甲冑‐』
今回は、市民のみなさんより寄贈いただいた、火縄銃(ひなわじゅう)と甲冑(かっちゅう)を展示しています。
火縄銃は、1543年にヨーロッパから日本に伝わった武器で、この伝来により日本での戦い方は大きく変わったといわれています。展示の火縄銃は、一部傷んでいる箇所や欠損している部品がありますが、全体的にバランスのとれたフォルムをした火縄銃です。その様子から、江戸時代後期頃のものとみられます。
甲冑は、江戸時代の歩兵用のものとみられ、兜(かぶと)、面頬(めんぼほ)、胴丸(どうまる)、籠手(こて)、草摺(くさずり)、脛当(すねあて)が揃っています。見た目には重厚感がありますが、この頃の甲冑は、火縄銃の登場により素早く動けるよう改良されていきました。
なお、火縄銃や日本刀などを持つことは、法律によって禁止されています。美術品として価値のあるものに限り、都道府県教育委員会に登録すれば、例外的に持つことができます。もし、タンスや蔵から火縄銃などが見つかった場合、まずは近くの警察署へ連絡してください。くわしくはこちら
3~4月のテーマ『こんなモノをいただきました‐ひなまつり‐』
ご存知のように、3月3日のひなまつりでは、ひな人形を飾りお祝いしますが、この日にひな祭りをするようになったのは、今から400年前の江戸時代からといわれています。大阪や京都では、京の御所をモチーフにした「御殿びな」が中心で、関東では5段や7段に飾るひな人形が人気となりました。
展示の御殿びなは、昭和15年(1930)に70円(現在だと、およそ10数万円)で購入したもので、平成6年に当館へ寄贈いただきました。立派な御殿に、内裏雛、官女や仕丁、随身(右大臣と左大臣)などがならび、現代のドールハウスのような雰囲気です。また、ひな人形だけでなく、手の込んだひな道具の豪華さや繊細さにも注目です。
5~6月のテーマ『こんなモノをいただきました‐ちょうちん‐』
新たに当館にご寄贈いただいた資料を中心に、日本独自の照明器具、提灯(ちょうちん)を展示しています。
提灯は、底にろうそくが立てられるようになっており、それを光源とします。風防の障子紙は、竹ひごで作られた骨が蛇腹式になっていて、伸縮自在なので、折り畳むことができ、保管・持ち運びに大変便利な優れものでした。
ただし、ろうそくは、菜種油などの他の明かりと比べて、とても高価だったので、提灯は、お祭りなどの特別な日や、何らかの緊急事態にのみ使用されることが多かったようです。
新蔵品の提灯は、お家の門や神社などに吊るす大型の「高張提灯」で、昭和3(1928)年に、国分で製作・販売されたものです。今回は、ほかに、携行用の「弓張提灯」、江戸時代に使用された「御代官所 御用」の記載がある「提灯箱」を陳列しています。
7~8月のテーマ『こんなモノをいただきました‐牛の道具‐』
新たに当館にご寄贈いただいた資料を中心に、牛の道具を展示しています。
牛は、農耕用、運搬用として、日本人の暮らしに欠かすことのできない動物でした。東日本で馬が多く用いられたのに対して、西日本は牛づかいの地域と言われ、柏原にもかつては多くの牛が活躍していたのです。自動車やトラクターなどの農業機械の登場によって、畜産業の関係者以外で牛を育てる人はほとんどいなくなりましたが、50年ほど前までは、道すがら、牛の姿を見ることができたといいます。多くの場合、家の一部にしつらえられた牛小屋のなかで飼養され、大切に育てられました。
展示している牛の道具は、昭和40年代まで、荷車を牽(ひ)いたり、田んぼを耕したりするときに、牛に装着していたとのことです。首木(くびき)・小鞍(こぐら)・尻枷(しりかせ)の牽引具3点セットがそのまま残されており、保存状態は極めて良好です。形状や素材からみて、昭和初期以降に本格的に登場する販売品であり、「近代化」を遂げた牛の道具の「最終形態」と言えるでしょう。
今回は、牛に牽かせる代表的な農具である犂(からすき)を一緒に展示しています。
ぜひ、この機会に、展示をご覧いただき、日本史上に果した牛の役割の大きさについて考えていただけると幸いです!
9~10月のテーマ『こんなモノをいただきました‐家庭用ゲーム機・切溜(きりだめ)‐』
新たに当館にご寄贈いただいた、家庭用ゲーム機・切溜(きりだめ)を展示しています。なお、今回の展示は、9名の博物館実習生が担当しました。
1.家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」は、任天堂が1983年に発売したもので、「あそび」の目的に特化して低価格化・簡易化を実現させており、コンピュータを家庭のなかに引込み、また子どもたちの世界にも解放した画期的な商品です。
2.切溜は、入れ子式に何枚もの箱膳をまとめて収納できる優れものの民具で、その機能美が目をみはります。食材や料理を保管する用途のほか、贈答品を贈る際にも使用されたようです。
使用された時代も場面も用途も大きく異なる2つの新蔵資料にじっくり向き合って、学芸員の卵たちが、新しい感性で展示を構築してくれました。
この機会をお見逃しなく!
11~12月のテーマ『こんなモノをいただきました‐湯たんぽ・安全こたつ・豆炭あんか‐』
新たに当館にご寄贈いただいた資料を中心に、安眠のための道具を展示しています。
ヒトは、原始時代から、「火」を用いて暖を取り、調理をし、また、獣から身を守ってきました。人類の歴史上、「火」を自由に使いこなせるようになったことが、あまりにも大きな進歩であったことは言うまでもありません。ただし、「火」は、一歩間違えれば、大変危険な存在。眠るときには消すのがふつうでした。
格段と冷える冬の夜であっても、眠りながら暖を取り(かつ「安全」に!)、心地よく朝を迎えたい。電気のない時代、こうした人類の宿願をかなえるため、色いろ工夫が重ねられてきた暮らしの道具について、今回のスポット展示では注目してみました。
展示している道具は、市内で使用されていた新蔵品のブリキ製湯たんぽ(割竹型)を中心に、陶器製湯たんぽ(かまぼこ型)・豆炭あんか・安全こたつ(回転こたつ)です。
湯たんぽは、やかんなどで熱湯を注ぎ、それを熱源として一晩温まる道具で、今ごろのような寒い日の夜には欠かせない道具でした。日本では明治時代に一般家庭に普及し、大正時代には、扱いやすいブリキ製が登場します。
また、安全こたつは、就寝中、うっかり蹴ってしまったとしても、炭などの火気を入れる金属製の火入れが吊下げ式になっていて、自在に回転して常に上を向くため、炭火・灰がこぼれない仕掛けになっている優れものの発明品で、大正時代、全国的に普及しました。デザインも美しく、見ごたえがあります。
ぜひ、この機会に、展示をご覧いただき、“安眠のための道具”について知っていただけると幸いです!