【コラム】世界かんがい施設遺産 長瀬川と玉串川 (10)これからの長瀬川と玉串川

2021年5月31日

 このように流域の村々の用水として守られてきた長瀬川と玉串川ですが、流域の田畑が少なくなり、かんがい用水を送るという使命は、次第に薄くなっています。現在でもかんがい面積が266haあり、決して少なくはないのですが、当初のかんがい面積が4,000ha近くあったことと比べると、ずいぶん少なくなっています。それでも用水は必要とされています。
一方で、住民の人々が水に親しむ空間として長瀬川や玉串川が見直されてきています。暗渠となってしまっているところも少なくありませんが、水の流れが人々の生活に潤いを与えていることは間違いないでしょう。
 柏原市内の長瀬川は、アクアロードとして整備され、カラー舗装やかわいい街灯や手すりなどがあり、散策する人も絶えません。鯉が泳ぎ、水辺まで降りられるところもあります。JR八尾駅の北東にある安中町5丁目公園は、長瀬川の水を利用して、緑地があり水遊びができる親水公園となっています。それ以外にも、長瀬川は各所で緑化が図られ、美しい景色を生み出しています。
 玉串川は桜の名所として有名です。老木が多くなってきたのは残念ですが、それでも桜の季節には大勢の人でにぎわっています。
 両川を美しく維持するために、市民活動も盛んです。その一つアクアフレンズは、長瀬川・玉串川の樋門ごとに水路の調査を行うなどの活動もあり、川を美しく残したいという思いがあふれています。流域の人々による清掃活動や汚れの調査なども行われ、長瀬川・玉串川は、用水路から市民に親しまれる水辺へとその姿を変えつつあります。これも時代の流れなのでしょう。取水している大和川も水質がよくなり、アユをみかけることも珍しくなくなってきました。大和川の水を取水する長瀬川・玉串川の水もきれいになってきているということです。世界かんがい施設遺産への登録や今回の企画展によって、さらに市民が長瀬川・玉串川に目を向けるようになってほしいと思います。 (安村)

(10)満開の桜と玉串川満開の桜と玉串川

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