安福寺の夾紵棺6
安福寺の宝物
安福寺には、尾張徳川家から贈られたものなど多数の宝物が所蔵されています。しかし、これまでに十分な調査が行われていないため、まだまだ隠れた宝物が眠っているようです。その中から、指定文化財を中心に、いくつかの宝物を紹介したいと思います。
まず、山水蒔絵硯箱、牡丹蒔絵硯箱、菩提樹蒔絵香筥の3点が国の重要文化財に指定されています。3点とも徳川光友から寄進されたものです。いずれも工芸上の一品で、現在は大阪市立美術館に寄託されています。
境内にある割竹形石棺蓋も国重要文化財に指定されています。古墳時代前期の割竹形石棺の蓋で、現在は天地が逆に置かれています。玉手山3号墳から出土したとされ、手水鉢として使用されていました。この石材は、讃岐(香川県)の鷲ノ山で産出する凝灰岩です。讃岐には刳抜式石棺が多く、この石棺も讃岐で造られたものが当地に運ばれてきたと考えられます。蓋の周囲に直弧文が刻まれています。直弧文とは直線と弧線からなる複雑な文様で、魔除けなどの効果があったとされる文様です。
参道の両側崖面には、大阪府指定史跡の安福寺横穴群がみられます。横穴は、崖面に掘りこまれた洞窟を墓として利用したもので、古墳時代の埋葬形態の一つです。これまでに40基の横穴が確認されています。6世紀中ごろから7世紀初めに営まれたものです。
それから、夾紵棺が柏原市有形文化財に指定されています。
指定文化財は以上ですが、これ以外にも注目される文化財が多数あります。まず、本堂は珂憶建と呼ばれる様式で、寛文年間(1670年代)に建てられたものです。尾張徳川家の廟も注目されます。1700年代初めに立てられた3基の宝篋印塔があります。これらは玉手山7号墳の前方部に建てられており、後円部には大坂夏の陣による戦没者供養のための宝篋印塔が建てられています。これは、珂憶によって建立されたとされます。さらに、朝鮮系の釣鐘や尾張徳川家から寄進された数々の品物、多数の経典や文献史料なども貴重な文化財です。
(文責:安村俊史)
写真:菩提樹蒔絵香筥(『柏原市史』第1巻より)