【柏原ぶどうレポート08】若手生産者による「ガチボラ」の現場を訪ねて

2020年7月22日

柏原ぶどうレポート

若手生産者による新たな取り組み「ガチボラ」
ぶどうづくりを守りたい人と学びたい人の架け橋に

シャインマスカット
柏原市の山間部、青谷地区で、明治時代から100年以上ぶどう栽培を続ける「葡萄のかねおく」。

4代目の奥野茂樹さん(写真下・右)は、大学卒業後に約5年間、福島県で自動車関連メーカーに勤めた後、
「故郷を盛り上げたい」と、Uターンして就農しました。

ぶどうづくりに励みながら、前職で培った企画力を生かした新たな農業ビジネスにも挑戦する中で、
2019年10月に、新体験型サービス「ガチボラ」を立ち上げました。

「ガチボラ」とは、「ガチンコ農作業ボランティア」の略称で、
参加者にとっては農業スクールのように費用をかけることなく、プロの農家さんから現場でガチの作業を習得でき、 農家さんにとっては、社会的課題となっている人手確保や後継者探しなどにつながる、
双方にメリットのあるサービスです。

今回、このガチボラに参加されている山田晃由さん(写真下・左)の作業現場を訪ねました。

奥野さんと山田さん

枚方市在住の山田晃由さんは、大手メーカーで営業職として長年勤務されており、昨年10月から、休日を利用してガチボラに参加されているそうです。

きっかけは、「定年が近づいてきて、子どもの手も離れ、違う生き方を考えるようになった。体の動くうちに、今までとまったく違うことがしたいと思った」。

そんなとき、ウェブサイトでガチボラを見つけて、「ぶどう栽培を1から勉強できる」と関心を持ち、申し込んだそうです。

山田さん

山田さんは、以前滋賀県のNPO法人が主催した農村資源を生かした体験プログラム「田舎もん体験」に参加し、ぶどう栽培をされた経験をお持ちだそうですが、ここまで“ガチ”の体験は初めて。

感想をうかがうと、「ぶどうと触れ合う作業は、大変だけど無心になれて楽しい。もともとは、植木の世話すらしたことがなくて、ほんまに続くの?と自分も家族も思っていたけれど、コツコツするのは向いているほうで、なんとか続いている」と話します。

山田さん作業中

楽しいといっても、もちろん、農業にラクな作業はありません。

特に印象に残っているのは、10月下旬に行った土木作業といいます。

「ハウスの保温ビニールを張る方法や、棚作りで杭の打ち方などを教わりました。傾斜がきつい畑で足元は滑るし、力はいるし大変で、ふうふう言いながらやった。こんな大変な作業があるとは知らなかったです」

奥野さんもこのときばかりは、「次から山田さんは来ないと思った」と振り返ります。

とはいえ、山田さんは前向きです。

農家の厳しさを痛感しながらも、「きついですけど、動いた後のごはんは美味しいですよ!」と、屈託のない笑顔をみせます。

目の前に広がるぶどう畑と、山々。

開放的な空間で過ごす時間は、良いリフレッシュにもなるそうです。

笑顔の山田さん

山田さんは現在、さらなる知識の習得に取り組み、自分の描く将来に向かっておられます。

今後の目標は、「5反のぶどう畑を持つこと」。

よく日にやけた山田さんは、成長真っ只中のシャインマスカットと並んで、とても生き生きとされていました。

◆奥野さんにお話を聞きました

奥野さん 山田さんについて、「1言ったら10伝わるタイプ」と話す奥野さん。ガチボラでは、参加する方々に農作業をお伝えしながら、ご自身も教わっているといいます。「今後、人を雇いたいと思っている中で、教育方法がわからなかったり、自分ではわかっていても、人に対して言語化できなかったりすることもあります。ですから、ガチボラで来ていただいている方々からは、労働力として助けていただいているだけでなく、たくさんの気づきをもらっています」。

 

果樹農業に、新たな風を吹き込む「ガチボラ」。

ぶどう農家を守り続ける人と、これからぶどう農家を始めたい人をつなぐプラットホームとして、今後どのようにつながっていくのか楽しみです。