知恵と技術~大和川のつけかえ工事2~

2015年8月3日

高さを測る

 新しい川を造ろうとすると、まず地形の測量が必要になります。新しい川の予定地の距離や高さを測って、水がうまく流れるか、そのためにはどのような方法で工事をすればいいのか、などを決めていくのです。

 距離を測るためには、縄を使いました。今の巻尺(メジャー)と同じように、一定の長さごと、たとえば1丈(約3m)ごとに結び目をつくり、1町(約109m)の長さの縄をつくります。これで距離を簡単に測ることができます。

 しかし、高さを測るのは、少し技術が必要になります。A地点とB地点の高さがどれだけ違うかを知るためには、まず基準となる水平の高さを決めることが必要です。水平を決めるのは、水の表面が必ず水平になる性質を利用しました。たとえば、木の板に細長い溝を彫り、そこに水を入れて水面に合わせて板を水平になるように置きます。その板に合わせて糸を張ると、その糸も水平になります。この糸からA地点の地面がどれだけ下がっているかを測ります。同じようにB地点がどれだけ下がっているかを測り、その差がA・B両地点の高さの差となります。この作業を繰り返すことによって、長い距離の高さも測ることができました。

 高さを測るには、間竿(けんざお)という大きなものさしを使いました。ものさしといっても特別なものではなく、長い棒に1尺(約30cm)ごとに印をつけたものです。必要に応じて、その半分あるいは1寸(約3cm)ごとに印をつける場合もありました。

 鎌倉時代の延慶2年(1309)に完成した『春日権現験記絵巻』には、当時の測量の様子が描かれています。これは建物を建てる際の測量ですが、水面から一定の高さに糸を張り、糸からの高さを測って柱を支える礎石の高さを決めているところです。江戸時代の測量も同様なものだったのでしょう。当時の測量技術を知るうえでよく引用される史料です。

(文責:安村俊史)

春日権現験記絵巻

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