亀の瀬こぼればなし(10)

2015年5月8日

 奈良県から大阪府へと流れる大和川。その府県境付近を「亀の瀬」といいます。

 亀の瀬は、地すべり地帯としてよく知られています。明治36年には地すべりによって河床が隆起し、その後の大雨で王寺周辺では大規模な被害が発生しました。

 昭和6年から8年にかけての地すべりはさらに規模の大きいもので、大和川が埋まってしまい、奈良県側で浸水被害が広がりました。また国鉄関西本線の亀の瀬トンネルも崩壊し、その後、線路が大和川左岸に付け替えられて現在に至っています。このトンネルが、最近の地すべり工事中に発見され、入口部分は崩れているものの、内部は良好に残っていることが確認され、年に数日の一般公開も実施されています。繰り返される地すべりに昭和35年から国直轄の地すべり対策事業が実施され、ようやくその工事を終えることになりました。

 ところで、昭和6年からの地すべりは、多くの人の注目するところとなり、翌年の1月から3月にかけて、多い日には1日2万人の見物客でにぎわったということです。出店などがならび、観光地となったのです。

 そのさいには絵はがきも販売され、人気を集めたようです。当館でも寄贈いただいた2組の絵はがきを所蔵しています。5~6枚入りの絵はがきですが、どうやら絵はがきの組み合わせはいろいろあったようです。地面に亀裂が入っている写真や、役人らしき人物が視察している写真、大和川が閉塞されている写真などがあり、当時の記録として貴重なものです。当館では、絵はがきの情報を集めていますので、お持ちの方は、ご連絡いただきたいと思います。

 それにしても、地すべりの見物に2万人とは。安全面で問題はなかったのでしょうか。見物に来る人の心境はどのようなものだったのでしょうか。今なら考え難い光景ではないでしょうか。

(文責:安村俊史)

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