亀の瀬こぼればなし(8)

2015年4月15日

 奈良県から大阪府へと流れる大和川。その府県境付近を「亀の瀬」といいます。

 重要文化財三田家の初代・三田浄久(さんだじょうきゅう)は、柏原船の営業に携わるために大坂から柏原へ移り住んだ人物だが、俳諧などを好む文化人としても著名であった。その浄久が、延宝7年(1679)に刊行した『河内鑑名所記』は、河内の名所・旧跡などを記した書物である。現在のガイドブックのようなものだが、江戸時代初期の河内の姿を知ることができる貴重な書である。

 ここにも亀の瀬のことが記されているので紹介しておきたい。

「亀瀬河、河中に亀岩とて亀のことくなる大石流ニ向て是あるニより、古へより川をも亀瀬川といひ伝え侍る、此所ニ四十八の名石有、しなおほきゆへあらまし書付侍る、雲岩は廿間ほともあり、銚子の口滝のことし、ゑぼし岩、小亀岩、扇岩、蓮華岩、高岩、笛吹岩、ほとけいは、きやうもり岩、屏風岩、三つ岩、のぞき岩、からうと岩、よりかゝり岩、へつい岩、くらがふち、がまがふち、大黒岩、弁財天岩」

 このあとに創作された狂歌や俳句が続く。

 「ゑぼし岩」は貴族のかぶる烏帽子(えぼし)のように細長く立っているので「烏帽子岩」。「きやうもり岩」は別の史料では「清盛岩」とあり、由来はわからないが平清盛になぞらえたものであろう。このように、亀の瀬には奇岩が多数あり、それぞれの岩に名称がつけられるなど、景勝の地として知られていたことがわかる。今もいくつかの岩が露出しているが、昔ほどの奇岩を見ることはできなくなっている。

(文責:安村俊史)

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