亀の瀬こぼればなし(2)

2015年2月19日

 奈良県から大阪府へと流れる大和川。その府県境付近を「亀の瀬」といいます。 「亀の瀬」は、なぜ「亀の瀬」と言うのでしょうか。それは、よく知られているように、今も残る「亀岩」あるいは「亀石」と呼ばれる巨石があることによるのでしょう。異説もあるようですが、そう考えるのが素直でしょう。

 川の中にある大きな岩塊から南西に細く突出した部分をもつ巨石は、いかにも甲羅から頭を出す亀のようです。江戸時代後期に刊行された『大和名所図会』にみられる亀岩と同じものを現在も見ることができます。

 この亀岩が動くと、地すべりが起こって大和川がふさがれ、大和(奈良県)に洪水が起こるという伝承があります。まさかそんなことはないと思うのですが、亀の瀬で地すべりが起こって大和川がふさがれると、奈良盆地は水没し、大洪水になってしまいます。その水は、やがて鉄砲水となって大阪平野を襲い、大阪平野も水没してしまいます。過去の地すべりの際には亀の瀬付近の地形も変わっています。『大和名所図会』の挿絵では川の中央に描かれている亀岩が、現在は右岸(北岸)近くにあることもそれを示しています。つまり、亀岩が動いて地すべりを起こすのではなく、地すべりが起こると亀岩やまわりの地形が動いてしまうのです。

 亀の瀬は地すべりが繰り返された地で、これまで大規模な地すべり対策工事が行われてきました。伝承も昔の人の教訓だと思って、今後の防災に活かしていくことがたいせつなのでしょう。そのように考えながら亀岩を見ていると、亀岩が大和川の守り神のように見えてくるのです。

(文責:安村俊史)

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